「なぁ鈴よ」
「何だにゃ?」
「……散歩でも行くか」
「行くにゃ!」
〜ある日の二人〜
鈴。
猫耳娘。それ以外に分類のしようがない。
猫耳と尻尾付きの少女、拾ってきた。これだけでも十分奇妙なプロフィールだが、正直な話どっかの最凶メイドよりはマシだ。
俺がこいつと出会った経緯は……、また別の機会にでも話そう。
いつも通り、二人で気ままに歩く。
「ところでさ」
「んにゃ?」
「結局お前は化け猫か猫又の類なのか?」
「違うにゃ!」
「じゃあ何なんだよ」
「鈴は鈴だにゃ! それ以外の何者でもないにゃ!」
なるほど、ごもっともだ。
「しっかし、猫のくせに哲学とは……」
生意気だな、と言いかけたがやめておく。
「にゃうん?」
「いや、何でもない」
面倒くさいんでな。
「別にいいけどにゃ」
「いいのいいの」
……などと言い合っている内に、家から一番近い公園が見えてきた。ここまで約五分。
「確かに、家でゲームでもさせてりゃケガの心配も連れ去られる心配もないがなぁ……」
俺がガキだった頃に比べて、公園で遊んでいる子供の数が確実に減っている。
「いつからだ? 公園が老人と犬の散歩場所になったのは」
「Ryo……」
鈴が心配そうにこちらを見る。
トレードマークである首に付けられた大きな鈴がちりんと鳴った。
「なぁに、いつも通り、とりとめのない思考さ」
気持ち悪い、と形容されかねない程の笑顔で応える。
「変な顔だにゃ。まぁ元々変だけどにゃ」
「っ、失礼な」
「だって本当の事だにゃ」
「……まぁいい。もう言われ慣れてるしな」
メイドとかその主人とか九の字のアイツとかな。
「ニャハハハハ!」
「笑いすぎだ。さて、ここでちょいとゆっくりしてから、もう少し歩くか」
そう言いながら、足元に生えていた猫じゃらしを一本引き抜く。
「ほらよ、鈴」
そして鈴に渡す。
「んっ……、ごろにゃうぅぅぅん」
何かに憑かれたように猫じゃらしと戯れる鈴。
やっぱり猫だな。
ベンチに座り、鈴を眺める俺。
こんな感じで、また今日も一日が過ぎていく。
のんびりとした、俺と鈴のとある午後だった。